2017年05月21日
ミュージカル「パレード」
東京芸術劇場プレイハウスで、ミュージカル「パレード」を観劇。
「レオ・フランク事件」という1910年代にアメリカで実際にあった冤罪事件をもとにした作品で、主役レオ・フランクを石丸幹二さん、そしてその夫人役を堀内敬子さんが演じています。
いやぁ、ヘビーな作品でした。
冤罪事件をもとにした作品というと思い出すのは、1966年の「ルービン・カーター事件」をもとにした「ザ・ハリケーン」というボクサーを描いた映画(デンゼル・ワシントン主演)です。
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この映画は衝撃的だった…。
さて今回の「パレード」、ミュージカルとは言いながら、実話をもとにした、テーマが重い作品であること、音楽的にもかなり複雑で多様性に富んでいること、演出で舞台面が傾斜舞台と盆(まわり舞台)を採用していること、などなど、出演者は肉体的にも精神的にもかなりシンドい作品だと思います。
やはり、作り手にある種の使命感が無いとできない作品。
というより、もしかしたら、「作り手に使命感がやどる」作品なのかも知れません。
作品自体がそんなパワーを内在している…そんな印象を受けました。
その点、森新太郎さんの演出は(良い意味で)ミュージカルながら実に演劇的で、高橋亜子さんの訳詞は歌詞の言葉がすんなりと聞き取れて、とても素晴らしかった。
出演者も石丸さん、堀内さんはじめ、小野田龍之介さん、アンサンブルまで歌唱力の高い方が多く、石川禅さん、宮川浩さん、安崎求さん、藤木孝さんの存在感、坂元健児さんの圧倒的な声など、厚みを感じさせるものでした。
ただ、一部楽曲の要求するレベルまで歌唱力が達していなかったり、脚本から肉体を媒介として伝えるべきものを表現しきれていない(演技)…が散見されたかな、というのが個人的な印象。
(ま、それだけ脚本とスコアが手強いということでもあるわけですが…。)
今回、「パレード」を観て、舞台に関わる人間には、つくづく"作品との巡り合わせ"というものがあるのだなぁと思うのです。
特に日本でミュージカルに関わっていると、ロングランが前提である作品は限られているし、再演、再再演と続く作品も同様です。
そんな中、自分の年齢やキャリアと重なり合うタイミングでどんな作品、どんな役と関わり合えるかは、本当に運と縁です。
そんな風に、石丸さん、堀内さんの(17年ぶり)のミュージカル作品共演を観ながら、かつてお二人が共演したとある作品が上演されるまでの過程で感じたことと同じことをまた感じた次第。
ブロードウェイ版は、あのハロルド・プリンス(「エヴィータ」「オペラ座の怪人」などなどの大演出家)が演出を担当してるんですね。
主演は、やはりハロルド・プリンス演出のミュージカル版「蜘蛛女のキス」で、モリーナを演じていたブレント・カーヴァー。
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ミュージカル「パレード」は、重厚で骨太な作品でした。